「世界の終わりを計算せよ!──ハノイの塔に隠された『0と1』のダンス」

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ハノイの塔

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こんにちは。

今日の授業は、こんな宣言から始まりました。

「今日の授業の最後に、実際に1度も円盤を動かさなくても、
100手目に何が起きるかを予言できるようになります。」

子どもたちは半信半疑の顔をしています。

授業テーマの説明

世界が終わる日の伝説

インドのベナレスにある寺院に、こんな伝説があります。

「64枚の黄金の円盤が、ダイヤモンドの針に刺さっている。
神官たちがこの円盤をすべて別の針へ移し終えたとき、世界は終焉を迎える。」

これが「ハノイの塔」と呼ばれる有名なパズルの起源です。

ルールはシンプルです。
「一度に動かせる円盤は1枚だけ」
「小さい円盤の上に大きい円盤は置けない」

──たったこれだけ。

このパズルは、千葉県立東葛飾中学校の入試問題にも出題されたことがあります。
なぜ入試に出るのか。今日の授業の後でわかります。

授業で扱う内容

体験ワーク①:最小手数のリズムを掴む

まず、模型を実際に動かしながら、枚数を変えて最小手数を探ります。

  • 1枚 → 1手
  • 2枚 → 3手
  • 3枚 → 7手
  • 4枚 → 15手

「あ、隣の数を2倍して1を足すと次の数になってる!」

子どもたちが自分で気づく瞬間を待ちます。
この規則の正体は「再帰(さいき)」という構造です。

3枚の場合で確かめてみましょう。
一番大きな円盤を動かすには、その上の2枚を別の棒にすべてどかさなければなりません。

  • 2枚をどかす:3手
  • 一番大きな円盤を動かす:1手
  • 2枚を戻す:3手

3 + 1 + 3 = 7手。

自分の中に自分が入っている構造」──これが再帰です。

体験ワーク②:「0と1」との出会い

次に、ワークシートを使って1〜16の数字を「2進法」に変換する作業を行いました。
2進法とは「0と1だけで数を表す表記のこと(=2を何回か掛け合わせた数の組み合わせ)」です。

  • 1 → 1
  • 2 → 10
  • 3 → 11
  • 4 → 100
  • 5 → 101
  • 6 → 110
  • 7 → 111

変換した後、ハノイの塔の手番と並べてみます。
「その手番で動かす円盤の番号」を書き出すと……

  • 1手目(2進法:1)→ 右から1番目に「1」→ 円盤①
  • 2手目(2進法:10)→ 右から2番目に「1」→ 円盤②
  • 3手目(2進法:11)→ 右から1番目に「1」→ 円盤①
  • 4手目(2進法:100)→ 右から3番目に「1」→ 円盤③

「手番を2進法に直したとき、右から数えて最初に『1』が現れる位置が、動かす円盤の番号と一致する」

「偶然じゃない……全部そうなってる!!」

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体験ワーク③:「大・小・大・小」のダンス

実は、2進法を知らなくても、ある『ダンスのリズム』さえ覚えれば、迷わず最小手数で解けます。

ハノイの塔のダンス2ステップ:

  • ステップ① 一番小さい円盤を動かす(円盤の総数が奇数なら左へ、偶数なら右へ)
  • ステップ② それ以外の「動かせる円盤」をちょうど1枚動かす

①②を交互に繰り返すだけで、必ず最小手数で解けます。
大・小・大・小」と声を出しながら、3枚・4枚で通しプレイを体験します。

クライマックス:「100手目の予言」

「では、実際に動かさなくても、100手目に何が起きるかを予言してみましょう。」

100を2進法に変換します。

  • 100 ÷ 2 = 50 あまり 0
  • 50 ÷ 2 = 25 あまり 0
  • 25 ÷ 2 = 12 あまり 1
  • 12 ÷ 2 = 6 あまり 0
  • 6 ÷ 2 = 3 あまり 0
  • 3 ÷ 2 = 1 あまり 1
  • 1 ÷ 2 = 0 あまり 1

100(10進法)= 1100100(2進法)

右から数えて最初に「1」が現れるのは3番目。

「100手目は円盤③を動かす。」

実際に100回動かさなくても、計算だけで答えが出た。これが数学の力です。

そしてシリーズ最後の一言。

64枚の円盤を移し終えるのに必要な最小手数は 2⁶⁴ − 1 手。
1秒に1手動かし続けても、5800億年かかります。
太陽の寿命よりはるかに長い。世界は終わらない──少なくとも数学的には。

算楽塾としての授業のねらい

「体験」から「規則性」へ、自分の足で到達する

この授業では、2進法を最初から教えません。
「手番と円盤番号を照合したら一致していた」という発見の体験の後で、
「これを2進法と呼ぶ」という知識が渡されます。

体験なしに知識を渡すと「覚える授業」になりますが、
体験の後に知識を渡すと「発見した授業」として記憶に残ります。

東葛飾中の入試問題が問う「考える力」とは

東葛飾中の入試問題は、ハノイの塔を64枚すべて動かすことを求めていません。
規則性を発見し、自分の言葉で説明する力を問うているのです。

今日体験した「再帰(自分の中に自分が入っている構造)」と「2進法との対応」は、
この問いに対する最強の答えです。
そしてそれは、現代のコンピュータが情報を処理するときに使っている
最も基本的な原理でもあります。

「100手目を予言できた。それは64枚の問題も、同じ方法で解けることを意味します。」

「わからなくていい。それが、考える力の始まりだ。」


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