算楽塾|「分ける」ことは、「分かる」こと 〜レゴのピラミッドが教えてくれたもの〜
「分ける」ことは、「分かる」こと 〜レゴのピラミッドが教えてくれたもの〜

「分ける」ことは、「分かる」こと 〜レゴのピラミッドが教えてくれたもの〜

分類アフタースクール

算楽塾塾長の山下洋輔です。

先日、算楽塾のアフタースクール・ワークショップで、
小学1年生から4年生の子どもたちと、
たくさんのレゴブロックを使った授業を行いました。

テーマは、
「大量のレゴを“分けて”、そして“積んで”ピラミッドをつくること。」

ひとことで言えば、それだけの活動です。

けれども私は、この「分ける」「積む」という二つの作業の中に、
算数・数学の本質と、人が世界を理解するときの根本の知恵が詰まっていると考えています。

今日は、その授業に込めた思いを、少しお話しさせてください。

大きな袋の、大量のレゴ

授業のはじまりは、大きな袋にどっさり入った、
色も形もバラバラの大量のレゴブロックです。

それをテーブルいっぱいに、ザーッと広げる。
子どもたちは「うわあ!」と歓声をあげます。

この「わあ、すごい量!」という驚きが、
実はとても大事な出発点です。

あまりに多くて、このままでは何がどれだけあるのか、まるで分からない。

人は、手に負えないほどの量を前にしたとき、
はじめて「どうにか整理できないか」と考え始めます。

私が算数の授業でいつも大切にしているのは、
この「わからない」「どうしよう」という壁を、
あえて先に体験してもらうことです。

その壁こそが、考える力の入口だからです。

「分ける」ことは、「分かる」こと

そこで子どもたちにお願いしたのが、仲間分け——分類です。

細いもの(1列)と太いもの(何列もあるもの)、
薄いもの(1段)と厚いもの(2段)。

「形」という視点で、世界を切り分けていく。

分けるための入れ物としてコップとお椀(わん)を配り、
どちらに何を入れるかの役割も、
子どもたち自身が相談して決めていきました。

じつは、この「分ける」という行いは、
「分かる」ことと深くつながっています。

「分かる」とは、複雑にからみ合った物事を細かく分解し、
その正体を見極めることだからです。

この「分けて考える」ことの大切さは、
古くから偉大な哲学者たちが説いてきました。

古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、
物事の本質を理解するために、複雑な現象を材料や目的といった
「4つの原因」に分けて整理する思想を打ち立てたと伝わります。

私たちが今も使う「分析(Analysis)」という言葉も、
もとは「からみ合った結び目を解きほぐす」という意味の
ギリシア語が語源だと言われています。

また、近代哲学の父と呼ばれるデカルトも、
困難な問題に直面したときは
「問題をできるだけ多くの小さな部分に分けよ」という方法論を遺しました。

大きなかたまりのままでは見えなかった真実も、
因数分解のように要素へ切り分けることで、はじめて正しく「分かる」。

数千年前の哲学者から現代の数学まで、
人類はこの一つの知恵を磨き続けてきました。

今日レゴを分けた子どもたちは、その知恵の入口に、自分の手で立っていたのです。

そして、この「分ける力」は算数・数学だけのものではありません。

散らかった部屋を片づける、
大量の情報を仲間ごとにまとめる、
仕事で問題を整理する——生活のあらゆる場面で、一生使い続ける普遍的な力です。

それを幼いうちに、遊びの中で楽しく育てておくこと。
その価値は、はかりしれないと私は考えています。

エジプトのピラミッドと、同じ知恵

形ごとに分け終えたら、いよいよ積み上げます。

大きく厚いブロックを下に、
上へいくほど小さく薄いブロックを重ねて——エジプトのピラミッドのような形です。

本物のエジプトのピラミッドも、たくさんの石のブロックを積み上げて造られたと伝わっています。
そして、その石は大きさや形がそろうように整えられていたと言われています。

なぜ、そろえるのか。

形がそろっていれば、「1段に何個並ぶか」が分かり、
「それが何段あるか」で、全体でいくつ使ったかを見通せるからです。

ばらばらの石を一つひとつ数えるのは大変ですが、
そろっていれば、まとまりで計算できる。

数千年前にピラミッドを築いた人々は、この知恵を使っていたのです。

分けて、そろえて、積む。時代も場所も超えて、人が同じ発見に至る。
目の前の子どもたちが古代の知恵を再発見していく姿に、私はいつも静かな感動を覚えます。

平面から立体へ —— 面積、体積、そして空間

積み上げるという作業は、
算数の豊かな世界へと子どもたちを導いていました。

まず、ブロックを1段、平らに敷きつめると、
そこに「面積」の感覚が生まれます。

「たてに◯個、よこに△個」と並べれば、その広がりは「◯×△」。
これはかけ算の意味そのものであり、小学4年生で習う面積の学習につながります。

そして、その平らな段が重なって厚みを持つと、
こんどは「体積」の世界へ入っていきます。

平面から立体へ。ピラミッドを積み上げる作業は、
面積と体積という二つの世界を、自然につなぐ橋になっていました。

さらに、崩れないように立体を組み立てるには、
頭の中で完成の形を思い描く「空間認識」の力が働きます。

図形を立体としてイメージするこの力は、
算数・数学の土台であるだけでなく、地図を読む、ものをつくる、
といった場面でも生涯にわたって役立ちます。

子どもたちは夢中で手を動かしながら、
面積・体積・空間という数学の広大な世界に、まるごと触れていたのです。

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「わからない」を、楽しめる子に

授業のあと、子どもたちが書いてくれた感想に、こんな言葉が並んでいました。

「ピラミッドが作れて楽しかった。またやりたい」
「めっちゃたのしかった」
「たのしすぎて、いえでもやりたい」。

中には「算楽塾ってなんだろうと思っていたけれど、えがおになった」
と書いてくれた子もいました。

私が算楽塾でいちばん大切にしているのは、答えを教えることではありません。

「わからない」から出発し、自分で分け、
工夫し、「そうか!」とひらめく——その瞬間の喜びを手渡すことです。

手を動かし、心が動いた体験は、忘れられない記憶として深く残ります。
そしてその記憶こそが、AIの時代にますます大切になる
「自分で考える力」を育てていくのだと、私は信じています。

わからなくていい。それが、考える力の始まりだ。

複雑な世界を、自分の手で分け、見極め、組み立てていく。

今日子どもたちが見せてくれたその姿は、
まさに一生モノの学力の芽そのものでした。

算楽塾は、これからも算数・数学の楽しさと、
学ぶことの喜びを、体験を通してお届けしてまいります。

最後までお読みいただき、有り難うございました。


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